先生の金魚
見た瞬間に恋に落ちるなんて
どーかしちゃってると思う。

出逢って一秒。
ようやく顔を知っただけ…
ううん、それもきっと違うと思う。

肖像画を見て、
好きになってるのと同じだと思う。

顔の表面を見ただけ。
細部までを見ることはしないで
パーツの細かい形も特徴も理解しないまま恋に落ちる。

恐ろしい話だ。

それでもこれは″本物″なんだって思ってしまった。
メグとせんせー、それからその他大勢との間に大きな壁が出現したみたいに、
メグにはもう、せんせーの声しか聴こえなかった。

愛も恋もきっと脳の病気なんだ。

愛や恋を知らなくてもビョーキ。
不意に恋に落ちたら落ちたでそれもビョーキ。

この世界には
なんて厄介なものが存在していたのだろう。

メグのこと
今まで好きだった言ってくれていた子達も
こんな気分だったのかな?

きっと違う。

こんなにも劇的で甘くて苦くて吐き出したくなっちゃうくらい、
それでもせんせーの毒で舌が痺れて死んじゃってもいいくらいの気持ち、
みんなが知ってるわけないんだから。

…本気なんだったらごめんなさいだけど。
そこまでの″魔力″がメグに在るとも思えないし。

この感情はきっと
メグとせんせーだけのもの。

これが運命ってやつなら
メグは信じてみてもいいかなって思えたんだ。
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