霧の向こうの青い鳥
「俺のいるアパートに来い。部屋が空いている」
優子は躊躇した。「でも...」


「大丈夫だ」健太郎の声に力強さがあった。「ここはオートロックで、防犯カメラもある。近所も静かだ」


優子は小さく首を振った。


「ありがとう。でも、迷惑はかけられない」


「命の問題だろう」健太郎の声が強くなる。


「今すぐ来い。それしか選択肢はない」
優子は黙り込んだ。

健太郎の言葉に押され、自分の意志が揺らぐのを感じる。


彼女の中で、恐怖と希望が入り混じっていた。



「わかった」ようやく優子は小さく呟いた。


バッグ一つを持って家を出た優子は、健太郎が指定した高級マンションに向かった。オートロックの扉を開け、エレベーターに乗り込む。心臓の鼓動が早くなる。
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