霧の向こうの青い鳥
「ええ、今日はポトフを作ろうと思って」尚子の手つきは慣れた様子で、野菜を手際よく切っていく。


優子は尚子の横顔を見つめていた。

整った鼻筋、長いまつげ、そして柔らかな唇線。しかし、その美しさの中に、どこか男性的な雰囲気も感じる。特に、包丁を握る手は大きく、力強さを感じさせた。



「尚子さん、料理上手なのね」優子は会話を続けようと声をかけた。



「ありがとう。一人暮らしが長かったから、必要に迫られて覚えたのよ」尚子の声には少し寂しさが混じっていた。

「そうなんだ...」

優子は尚子の過去に興味を持ち始めた。


「私も一人暮らしだったけど、料理はあまり...」


「そう?じゃあ、これからは一緒に料理しましょう」尚子は優子を見て、優しく微笑んだ。



その瞬間、優子の心臓が少し早く鼓動を打った。



尚子の笑顔に、どこか懐かしさと新鮮さを同時に感じたのだ。



「ありがとう、尚子さん。ぜひお願いします」優子は少し照れながら答えた。
その夜、二人で作ったポトフを食べながら、優子は考えていた。





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