キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜
耳元でそんな風にささやかれたら……ダメなんて言えないよ。
「……ダメじゃないよ」
「よかった」
仮面越しでもわかる、きっと今嬉しそうに笑っているんだろうなって。
そう思うだけでキュンキュンしちゃう。
私はあやくんに手を引かれ、静かに会場から出た。
着いた先は、誰もいない音楽室。
大きくて立派なグランドピアノが月の光に照らされ、何とも言えない幻想的な雰囲気だ。
「ピアノ……! ねぇあやくん、昔二人で連弾したよね」
まだ家が裕福だった頃、私はピアノを習っていた。
私があやくんに教えて、一緒に弾いたこともある。すごく簡単な曲だったけど。
「あったね。今も弾くの?」
「ううん、だいぶ前にやめちゃった」
「そっか」
「家にあったピアノも売っちゃったし、全然弾いてないなぁ」
「弾いてみる?」
「えっ」
「久しぶりに連弾しない?」
やりたい! けど、本当にやめてから一度も弾いてないから覚えてるかな……。
「私、忘れてるかも」
「俺もだよ」
そう言いながらあやくんは私の隣に椅子を持ってきて、ピアノの前に座った。
肩が触れそうなくらいに近くてドキドキした。
「……あ、仮面邪魔だわ」
そう言って真紅の仮面を取り外すあやくん。
改めて黒髪あやくんを間近で拝むことになり、あまりのカッコよさにキュンキュンしてしまう。
「つづも仮面外そうか?」