キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜
やばい、殴られる……!
そう思ったけど、もう一人の顔が急に青くなった。
「おい待て、こいつの制服も糸奈だ!」
「お坊ちゃんってことか? 金待ってそうだもんな」
「バカ、そんなもんじゃねぇよ! 白いブレザーってことはそいつ、権力者の息子かも……!!」
それを聞いて腕をつかんでいた口ピアスの人は、目を大きく見開いてピンク髪の彼を凝視していた。
「権力者かどうかはともかく、お前らのこと調べ上げて二度と外を歩けなくさせることはできるけど?」
「……っ!!」
「顔はしっかり覚えたから」
「ひ……っ、うわーー!!」
二人とも蒼白になって逃げ去ってしまった。
ホッとした私は、一気に力が抜けてへたり込んでしまう。
こ、こわかった……。
「大丈夫?」
ピンク髪のイケメンと初めて目が合った。
改めて見てもとても綺麗な黒い瞳をしている。
「あ、ありがとうございました……!」
慌てて立ち上がって深々と頭が下げる。
「あなたが来てくれなかったら、どうなっていたか! 本当にありがとうございます!」
何度も九十度直角に腰を曲げてお礼を言う。
「――俺のこと、わかんない?」
「えっ」
思わず顔を上げた。
「久しぶりだね、“つづちゃん”」
あれ、その呼ばれ方は――。
その瞬間、私の脳裏に懐かしい記憶がフラッシュバックした。
「……あやくん?」
「そ。久しぶり」
彼の笑顔には、懐かしくてかわいい私の“弟”の面影が確かに存在していた。