キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜


 つづの父親は何度も何度も謝ってくれたけど、どうしようもないのは子どもでもわかった。

 別れる時、つづは泣きそうになるのを必死にこらえていた。


「あやくん、元気でね」


 瞳を潤ませ、声を震わせながらそれでも笑おうとするつづを抱きしめたかった。

 次につづに会う時は、つづを守れるような男になろう。
 男として頼ってもらえる男になろう。

 密かに誓いを立て、俺たちは別れた。

 俺と母さんは安いアパートを借り、母さんは弁当屋でパートを始めた。
 その一方でハローワークに通い、正社員として雇ってもらえる仕事を探していた。

 何とか母さんを支えたかったが、子どもができることなんて家のことを手伝うことくらい。
 母さんを楽にさせてあげるにはどうすれば良いのだろう。

 そう思っていた時、母さんは今の父親と出会った。

 弁当屋の常連だというその人は、あの玖央ホールディングスの社長だった。
 ずっと独身を貫いていたが、母さんを見初めて結婚を申し込んだ。

 玖央さんは立派な人だった。
 母さんだけでなく、俺のことも家族として受け入れたいと言ってくれた。

 俺は母さんをよろしくお願いします、と頭を下げた。
 必ず幸せにする、と力強く答えてくれたこの人を信じたいと思った。

 そして母さんは再婚し、まもなくして双子を身ごもった。

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