キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜
義父に頼るのは癪だったから自分で稼ぐ方法ができて結果的にはよかった。
だが玖央ホールディングスの御曹司で経営者となると、周りの俺の評価は一気に上がる。
「流石は玖央社長のご子息になられる方! お父様も鼻が高いでしょう」
「是非とも我が社のことをご贔屓に……」
「もちろんです。どうか息子のことをよろしくお願いします」
……本当に反吐が出る。
家族として受け入れると口先では言っていたくせに、自分の子ができた途端に俺を疎む義父も、玖央という権力にへつらうやつらも。
今更ながらにあの時母が言っていた言葉の意味を理解した。
「家政婦の息子と千歳商事のお嬢様では釣り合わないから諦めなさい」
そう言いたかったのだろうと思った。
千歳商事が倒産したことは風の噂で聞いていた。
今頃つづがどうしているのかわからない。
会いたいとは思わなかった。
つづを守れる男になりたいとは思っていたけど、思い描いていたものとは違ったから。
言うなれば、借り物のスーツを着て背伸びしているみたいな気分だ。
中身はガキのままなのに。
「ちょっと綺世!? その髪どうしたの!?」
「……別に」
入学式前日、俺は髪をピンクに染めた。
こんな頭のやつなら誰も近づいてこないだろうと思ったから。
だけど、予想は全く違った。
「玖央くんっていうの? 織笠るこです。るこ、玖央くんと仲良くなりたいなぁ……♡」