キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜


 帰る前に崩れたメイクは紗良ちゃんが綺麗にしてくれた。
 かわいいの一言だけで私の心臓はキュンキュンしてしまう。


「あ、あやくんこそ、もう怒ってない?」

「怒ってない。別につづに怒ってたわけじゃないよ」


 あれ、そうなの……?


「あのメガネの男がつづに告ってたのがムカついただけ」

「それってどういう……?」


 ドキドキしながら尋ねたら、私のことを離して真っ直ぐ目を見た。


「つづは俺のものだから」

「……っ」


 それは、ヤキモチ?

 それとも姉を取られたくない弟みたいな気持ち?
 オモチャを取られた子どもみたいに拗ねてるの?

 それとも――、


「ずっとそう言ってるでしょ?」


 雇い主だからって意味なのかな?


「あやくん、あの」

「だけど、反省してる。あんな風に強引にするのは違うよね。本当にごめん」

「ううん、それはもう大丈夫」

「だから、しばらくキスはしない」


 え…………?


「またやりすぎてつづのこと傷付けたくないし……」

「え、でも、大丈夫だよ?」

「ダメだよ、ケジメつけないと。だから俺からはしない」


 え、えっ?
 あやくんからはしないってことは――?


「つづからしてくれる分には大歓迎だよ?」

「っ!?」


 こつん、とおでこをくっつけられて綺麗なお顔が至近距離。
 唇が触れそうな距離なのに、すぐに離れてしまう。


「したくなったら言って。それまではしないから」

「え、えーー?」


 毎日キスする条件だったのに、まさかのキスはしない宣言。
 私の心はまだまだかき乱されそうな予感がする――。

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