悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
そして次の日……
朝、いつも通りのセリオの姿をしている鏡に映った私は、不安そうな顔でこっちを見ていた。
どこからどう見てもセリオだ。だが、昨日不覚にもルーカスに会ってしまった。私がセシリアだとバレたらどうしよう。その前に、もういつも通りの対応が出来ないかもしれない。私の知らなかったルーカスを知ってしまったからだ。
館の廊下を歩きながらも、ドキドキと鼓動がうるさい。そして歩きながら、どうやってルーカスに会って話しかけるか、頭の中でシュミレーションをする。
「おはようございます、ルーカス様」
「昨夜の舞踏会、いかがでしたか? 」
いや、舞踏会の話は地雷だ。出来る限り避けたほうがいいだろう。
「昨夜は途中で逃げ出してしまって申し訳ありません」
それこそ、私がセシリアだと言っているようなものだ。