悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「おはよう、セリオさん」

 不意に声がして、思いっきり飛び上がった。

 まずい、変な動きをしたから、カツラがずれてしまいそうだ。頭を押さえてどぎまぎしながら見た先には、いつも通りの笑顔のジョエル様がいる。

 昨夜、ジョエル様に最後に会った時は、令嬢をたくさん引き連れていた。まさか、ジョエル様もあの後……そんなことを考えると、顔が真っ赤になってしまう。



 真っ赤な顔の私を、ジョエル様は不思議そうに首を傾げて見る。いけないいけない、このままだとジョエル様にまで疑われてしまう。冷静に冷静に!必死で心の中で唱える私に、ジョエル様は困った顔で告げた。

「兄上が、仕事をしないんだけど……」

「えっ!? 」

 その予想外の言葉に、またさらに飛び上がりそうになる。そして、ドキドキと心臓は破裂しそうな音を立てる。

「ど、どうされたんですか!? 」

 どぎまぎしながら聞く私に、ジョエル様は困った顔のまま教えてくれた。

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