悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「兄上が妄想に耽っていて、ずっとぼーっとしているんだよ」
それは困る。ルーカスに使える身として、主人がポンコツになってしまったらいけない。いや、もとからポンコツかもしれないが。花祭りの準備や資金管理など、ルーカスがやらなきゃいけない仕事は多い。
「セリオさんが頭突きでもしてくれると、兄上も我に返るんだろうけど……」
「ず、頭突きなんて出来ません……」
怯えながらもジョエル様と並んで、ルーカスの部屋へと向かう。
私は今、セリオだ。それなのに胸はドキドキして、体が震えてしまう。ルーカスとは結婚出来ないはずなのに、こうもルーカスのことばかり考えてしまう私だっておかしい。ルーカスと同じように、妄想に耽っているのだろう。