悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 そして、ジョエル様とルーカスの部屋の扉を開けると、そこには本当に妄想に耽っているルーカスがいた。

 椅子に座って机に向かうルーカスは、ぼーっと宙を眺めて頬を染めている。そして、私たちが部屋に入ったことすら気付かない。……重症だ。



「お、おはようございます、ルーカス様」

 震える声で告げるが、ルーカスの耳には届いていないのだろうか。なおもぼーっと宙を見続けている。

「ほらね。頭突きしないと我に返らないよ、あれは」

 ジョエル様が隣で笑う。

 本当に、頭突きしないと我に返らないかもしれない。あのまま何時間も居続けられたら、今日の予定も狂ってしまう。私はルーカスに酷く怒られるだろうが、ここは意を決して……


 ガチーーーン!!


 思いっきりルーカスに頭突きした。その瞬間、

「痛ぇぇぇえええ!! 」

 ルーカスが大声を上げ、私の頭突きした部分を押さえる。そして我に返ったルーカスは、怒りの声で私を呼んだのだ。

「クソチビ……てめぇ……!! 」

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