悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
確かに恋をしたことはないし、ルーカスの心の中は分からない。だが、……ピンク色の嵐!? ルーカスはなに変なことを言っているのだろう。
そして、ルーカスは予想外に、私が頭突きをしたことに腹を立てていない。いや、セシリアが気になりすぎて、私が頭突きをしたことなんて忘れているのかもしれない。
「セシリアはいい女になっていた」
宙を見つめたまま、ルーカスが話す。
「お前には分からないだろうがな」
分かるはずがない。だって私がセシリアだから。なんてことは、言えるはずもない。
私は仕方なく、ルーカスの言葉にテキトーに相槌を打っておく。すると、私が聞いていることをいいことに、ルーカスの妄想はますますエスカレートするのだ。