悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 確かに恋をしたことはないし、ルーカスの心の中は分からない。だが、……ピンク色の嵐!? ルーカスはなに変なことを言っているのだろう。

 そして、ルーカスは予想外に、私が頭突きをしたことに腹を立てていない。いや、セシリア()が気になりすぎて、私が頭突きをしたことなんて忘れているのかもしれない。


「セシリアはいい女になっていた」

 宙を見つめたまま、ルーカスが話す。

「お前には分からないだろうがな」

 分かるはずがない。だって私がセシリア()だから。なんてことは、言えるはずもない。

 私は仕方なく、ルーカスの言葉にテキトーに相槌を打っておく。すると、私が聞いていることをいいことに、ルーカスの妄想はますますエスカレートするのだ。

< 109 / 267 >

この作品をシェア

pagetop