悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「ルーカス様……犬の世話というのは、予想以上に大変なんです。
毎日の散歩、トイレ、餌だけでなく、遊んであげたり、病気にならないように健康管理にも気をつけないといけません。今の業務をこなしつつ、それをするのは酷です」
だからきっと、私が犬の世話をすることになるのだろう。貴族というものは、そういうものだ。そして、ルーカスは私の反論に怒るに違いない。だが、安易な気持ちで犬を飼い始めるのはいけないと、私は思う。
ルーカスは私をじっと見つめた。
どんな暴言が飛び出すのかと思ったが……
「覚悟の上だ。
俺はセシリアの認める男になりたい。セシリアを喜ばせたい。
だから、犬だって克服して、俺に懐く犬を飼ってやる!」
めちゃくちゃな理由だ。だが、私の心は思いっきり揺さぶられた。セシリアのために、嫌いな犬を飼って犬嫌いを克服し、犬の世話をするだなんて。
私は真っ赤な顔でルーカスを見ていた。ルーカスは照れたように頭を掻きながら告げる。
「そうと決まったら、早速ペットショップへ行くぞ」
「えっ!? 今からですか? 」
ちょっと待って。今からだなんて、いきなりすぎる。思いついたら即行動、それはいいことかもしれないが、いくら何でも無謀すぎるだろう。
だが、ルーカスの気持ちはもう固まっているようだ。仕事を中断し、上着を羽織る。そんな訳で、ルーカスの思いつきにより、私たちは急遽ペットショップに行くことになったのだ。