悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。



 ペットショップは館から徒歩数分の距離にあった。広い室内には、犬や猫以外にも、爬虫類や鳥なんかも売っていた。この街で一番大きなペットショップに違いない。

 そして、犬好きの私は、ペットショップに入った瞬間犬に釘付けになる。マロンのようなもふもふの中型犬に、いかにも貴族の犬といった美しい小型犬。凛々しい大型犬なんかもいる。

 私は誘われるように犬に近付き、

「可愛い!この子抱っこしてもいいですか? 」

近くにいた店員に聞く。そして美しくブラッシングされたその小型犬を抱いた時、刺すようなルーカスの視線を感じた。

 ルーカスの視線を感じてはっと我に返り、自重しなければいけないことを思い出す。私としたことが、犬が可愛すぎて、完全に素になってしまった……

 ルーカスは腕を組んで冷めた目で私を見る。それで慌てて、

「す、すみません。犬が可愛くて……」

犬をケージの中に戻す。それでもその犬は抱っこしてもらいたいようで、ケージに前足を乗せて吠えている。その様子を身て、実家の愛犬マロンの姿を重ねていた。

 しばらく会っていないが、マロンは元気にしているだろうか。

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