悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「る、ルーカス様。無理になさらなくても……

 セシリア嬢との結婚は、犬がいるかどうかは関係ないかと思いますが……」

 おずおずと言う私を、ルーカスは犬に舐めなられながらも睨む。

「それでも、セシリアの好きなものは全て揃えたいんだ!」

 その気持ちは嬉しい。だが、ルーカスが無理をしていることは明らかだ。

「せ、セシリア嬢は、ルーカス様が無理をしていると悲しむでしょう」

 思わずそう言うと、ルーカスは犬を抱いて顔を舐められプルプル震えながら、青ざめた顔で私を睨んだ。

「お前にはセシリアの気持ちが分かるのか!? 」

 分かる。私がセシリアだから。だなんて、言えるはずもない。

「俺はセシリアのためなら、どんなことだって我慢するし受け入れる。

 犬だって、きっと好きになってやる」

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