悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
こんなわけで、ルーカスは犬を飼うことになった。犬の名前もマッシュに決まったようだ。マッシュには申し訳ないが、由来を知らなかったら可愛くていい名前だとも思う。そのため、マッシュという名前の由来は忘れることにした。
館に帰ってひと息つくと、マッシュはここが新しい家だと分かったらしく、いたずらっ子の本領を発揮し始めた。きゃんきゃん吠えて部屋中を駆け回り、ルーカスの書類を口に咥えてぶんぶん頭を振った。ペットショップにいた時の大人しさが嘘のようだ。それでルーカスが完全に怯えてしまったため、片付けやしつけは私がすることになるだろう。
「こ……こんな礼儀知らずのクソ犬だとは思わなかった」
ルーカスは震える声で呟いたが、私はルーカスに告げていた。
「どんな犬でも、迎えた人に責任はあるのです。
マッシュがせっかく館に来てくれたのですから、ルーカス様とマッシュがお互い心地よく暮らせるように頑張りましょう」