悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 私の言葉に、

「だといいんだがな」

ルーカスは穏やかに答える。


 ルーカスには、いつもの狂気じみた態度で接して欲しい。こうやって穏やかに接されると、あの日のことを思い出してしまうから。忘れかけていたが、あの日の優しいルーカスや甘いキスを思い出してしまうから。また、ルーカスに触れたいとさえ思ってしまう。

 いつもの乱暴者で嫌なルーカスに戻って欲しい私は、必死にルーカスに告げる。

「きょ、今日のルーカス様は、い、いつもと違って穏やかですね」

 ルーカスは怒ると思った。はっと我に返って嫌なルーカスに戻ると思ったのに、

「そうかもしれないな」

ぽつりと私に告げた。

「正直、お前を見ていると、すげー劣等感が押し寄せる。

 お前はクソチビのくせに、キノコも食べられるし犬の世話も出来る。

 おまけに、性格もいいときた」

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