悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「どうかな? 」
お兄様は面白そうに笑っている。
「それに、俺だって好きでやっている訳ではない。
身分制度のため、惚れた女とは結婚出来ないことは分かっている。
だから、令嬢たちとは後腐れなく遊んでるだけだよ」
「うわっ、やっぱりチャラい。
私、お兄様みたいな人とは結婚したくないや」
なんて言いながらも、ふと思った。
ルーカスは否定していたが、まさかお兄様みたいなことはしていないよね?
今は指南書を読んでいるところしか見ないが、あのキスはやたら手慣れていたし……
ルーカスとのキスを思い出して、また顔が赤くなった。体がきゅーっと甘い音を立てた。そんな私を見て、お兄様は面白そうに笑った。
「ルーカス様は、ご自身でしかしていないと思うけどね」
「……言い方!! 」
もう、お兄様の馬鹿!! そんなことを言うと、余計に意識してしまうじゃないの!!
私は真っ赤な顔でマッシュのリードを引き、逃げるようにお兄様のもとを去ったのだった。