悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
やっぱり私は結婚出来ない
マッシュと散歩を終え、部屋に帰ると、相変わらず忙しそうなルーカスがいた。
業務があまりにも詰まっているからだろうか、愛読書の指南書が無造作に床の上に落ちていた。それを見て、お兄様の言葉を思い出してしまう。
『ルーカス様は、ご自身でしかしていない』
私は思わず首をぶんぶん振っていた。
ルーカスが何をしようが、私には関係ない。そして、そんな関係になるはずもないのだから。
そんな私を、ルーカスは怪訝な目で見た。そして、相変わらずぶっきらぼうに告げる。
「遅かったな」
どきりとする。
「ちょ、ちょうど知り合いに会いまして」
そう告げると、
「マルコスか」
ルーカスはさほど興味も無さそうに吐き出した。