悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
やっぱり私は結婚出来ない


 マッシュと散歩を終え、部屋に帰ると、相変わらず忙しそうなルーカスがいた。

 業務があまりにも詰まっているからだろうか、愛読書の指南書(エロ本)が無造作に床の上に落ちていた。それを見て、お兄様の言葉を思い出してしまう。

『ルーカス様は、ご自身でしかしていない』

 私は思わず首をぶんぶん振っていた。


 ルーカスが何をしようが、私には関係ない。そして、そんな関係になるはずもないのだから。

 そんな私を、ルーカスは怪訝な目で見た。そして、相変わらずぶっきらぼうに告げる。

「遅かったな」

 どきりとする。

「ちょ、ちょうど知り合いに会いまして」

 そう告げると、

「マルコスか」

ルーカスはさほど興味も無さそうに吐き出した。

< 142 / 260 >

この作品をシェア

pagetop