悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 どうやら、私がセシリアだということは、全然バレてもいないらしい。だが、ルーカスは仕事の合間で私を監視していたのだろうか。私がお兄様と話していたことも、見られていただなんて。


「マルコス、顔もいいし強いからな。

 セシリアの兄だというだけで嫉妬してるが」

「えっ!? ルーカス様が嫉妬されることなんて、あるんですね!? 」

 思わず口が滑ってしまい、慌てて口を押さえる。

 やばい、ルーカスはまた怒るのだろうか。だが、意外にも彼は冷静だ。

「マルコスも不憫だな。爵位剥奪された瞬間に、縁談も白紙になってしまって」

「……え? 」

 思わずルーカスを見ていた。


 お兄様に、縁談なんてあったの? そして、爵位剥奪のために縁談が白紙になったの? そんなこと、全然知らなかった。

 お兄様はもしかすると、その縁談相手が好きだったのかもしれない。それでさっきもあんなことを……

< 143 / 267 >

この作品をシェア

pagetop