悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


「だからお兄……マルコス様は、寂しさを紛らわすために、ご令嬢たちと遊ばれているのですか? 」


 お兄様のことはよく知っていると思っていた。だが、お兄様には私の知らない辛さがあったのだ。

 お兄様は後腐れなく楽しくやっているのかと思っていたが、実は必死にもがいているのかもしれない。私はお兄様のよき理解者だと思っていたのに、酷いことを言ってしまった。

「マルコスがどういうつもりなのか、俺は知らないけど」

 ルーカスは窓の外をちらっと見て告げる。

「でも、マルコスはセシリアの幸せを誰よりも願っている。

 そして俺は、セシリアをマルコスみたいな目には遭わせたくない」

 そういう直球はやめて欲しい。また胸が疼いて止まないから。こうやって素で優しいことを言われると、意識しないではいられなくなる。


< 144 / 260 >

この作品をシェア

pagetop