悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「だからお兄……マルコス様は、寂しさを紛らわすために、ご令嬢たちと遊ばれているのですか? 」
お兄様のことはよく知っていると思っていた。だが、お兄様には私の知らない辛さがあったのだ。
お兄様は後腐れなく楽しくやっているのかと思っていたが、実は必死にもがいているのかもしれない。私はお兄様のよき理解者だと思っていたのに、酷いことを言ってしまった。
「マルコスがどういうつもりなのか、俺は知らないけど」
ルーカスは窓の外をちらっと見て告げる。
「でも、マルコスはセシリアの幸せを誰よりも願っている。
そして俺は、セシリアをマルコスみたいな目には遭わせたくない」
そういう直球はやめて欲しい。また胸が疼いて止まないから。こうやって素で優しいことを言われると、意識しないではいられなくなる。