悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「で、ですが!やっぱりルーカス様は次期公爵ですので……」

「立場など関係ないと言っただろう」

 ルーカスは急に大声を出し、机をガンと叩く。最近落ち着いていただけに、久しぶりに荒ぶられると心臓に悪い。しかも、その内容が私の話なのだから。



 ルーカスは刺すような瞳で私を睨んだ。

「それ以上セシリアを侮辱するのなら、いくらクソチビでも許さない。

 代々俺の使用人はセシリアを侮辱した。それで俺がブチ切れるから、愛想尽かして去っていった。

 お前なら分かってくれると思ったが、やっぱりお前も俺を理解してくれないのか」


 その言葉が胸に突き刺さる。

 まさかとは思ったが、ルーカスの歴代の使用人は、セシリア()の件で揉めて去って行ったのだ。ルーカスがそこまで私を大切にしてくれるのは嬉しいが、申し訳なくも思う。これではルーカスの悪い噂は、私のせいではないか。だから私はこれ以上ルーカスを悪人にさせないためにも、セシリア()の悪口はもう止めようと思う。

< 145 / 267 >

この作品をシェア

pagetop