悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「で、ですが!やっぱりルーカス様は次期公爵ですので……」
「立場など関係ないと言っただろう」
ルーカスは急に大声を出し、机をガンと叩く。最近落ち着いていただけに、久しぶりに荒ぶられると心臓に悪い。しかも、その内容が私の話なのだから。
ルーカスは刺すような瞳で私を睨んだ。
「それ以上セシリアを侮辱するのなら、いくらクソチビでも許さない。
代々俺の使用人はセシリアを侮辱した。それで俺がブチ切れるから、愛想尽かして去っていった。
お前なら分かってくれると思ったが、やっぱりお前も俺を理解してくれないのか」
その言葉が胸に突き刺さる。
まさかとは思ったが、ルーカスの歴代の使用人は、セシリアの件で揉めて去って行ったのだ。ルーカスがそこまで私を大切にしてくれるのは嬉しいが、申し訳なくも思う。これではルーカスの悪い噂は、私のせいではないか。だから私はこれ以上ルーカスを悪人にさせないためにも、セシリアの悪口はもう止めようと思う。