悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ルーカスは私を値踏みするような目で見た。そして、わざとらしく大きなため息をつく。ため息の次に吐き出された言葉がまた衝撃的で、ひっくり返りそうになる。
「それなら、お前にセシリア役をやってもらおう」
「せ、セシリア役、ですか? 」
なんとか吐き出した声が震えていた。ルーカスはまた、何を考えているのだろうか。嫌な予感しかない。
ルーカスは獲物を狙うような瞳で私を見て、意地悪そうに口角を上げて告げた。
「お前、女みたいだから、ちょうどいいだろう。
まあ、お前とセシリアなんて、月とスッポンだろうが」
私がセシリアだとはバレていないが、女っぽいとは思われているようだ。そして、今の私は散々な言われ様だ。私をセリオだと思っているルーカスは、きっとキスなんかはしないだろうが……セシリア役だなんて。嫌な胸騒ぎしかしないのだった。