悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「まあいい。お前、セシリアみたいに振る舞え」
無茶振りをされて、どうすればいいのか迷う。私がもしセシリアみたいに振る舞って、ルーカスにバレてしまっては元も子もない。
ルーカスは、考え込む私の手を不意に取った。
急に触れられるものだから、体がどきんと音を立て、
「ひゃっ!」
なんて変な声まで出る。
こんな私を見て、
「お前、やけに演技が上手いな」
ルーカスは言う。
いや、演技ではない。ルーカスが不意打ちをするから、本性が出てしまっただけだ。ドキドキする私は、真っ赤な顔でルーカスの腕を持つ。
「セシリア。今日は来てくれて嬉しい。会えて嬉しいよ」
甘く優しい声で告げられ、胸がいちいちきゅんと鳴る。