悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


「セリオ」

 急に偽名を呼ばれ、

「は、はははい!! 」

思わず飛び上がる。こんな私に、男性は告げた。

「私は公爵家執事長のウンベルトだ。

 私は使用人を束ねる立場にある。何か分からないことがあれば、私に聞いてくれ」

「は、はい!!」

 私はまた大声で返事をして飛び上がる。

 騎士のお兄様はあんなにかっこいい振舞いをしているというのに、私はダメダメだ。こんな私を、半ば不安そうにウンベルトさんは見下ろす。

「君、本当に大丈夫か? 」

 挙げ句の果てに、そんなことまで言われる始末。ウンベルトさんも、おかしな人を雇ってしまったと後悔しているかもしれない。だが、色々考えると今さら不安になってしまった私が、堂々とした態度を取れるはずもなかった。


 さらに、ウンベルトさんは私を見下ろしたまま、気の毒そうに告げる。

「ルーカス様直々のご指名により、君はルーカス様専属の使用人となるのだが……」

「えっ!? 」

 思わず大声を出してしまった。


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