悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 複雑な思いの私は、きっと無防備だったのだろう。不意にルーカスに抱きつかれた。
 
 体がぼうっと熱くなり、ルーカスの香りに頭がクラクラする。そして私は反射的に悲鳴を上げ、ルーカスを力いっぱい突き飛ばしていた。



 私に突き飛ばされたルーカスは、驚いた顔で私を見ている。そして、私は心臓をばくばく言わせながら、半泣きの顔でルーカスを見ている。

「も、申し訳ありません……」

 震える声で謝るが、無意識のうちに両手で胸の辺りを庇っていた。そんな私を、ルーカスは頬を染めて目を見開いて見る。

「お前……マジで女みたいな体だな」

「きょ、虚弱体質なので……」

 そう告げるのが精一杯だった。


 迂闊だった。ルーカスに抱きつかれてしまったなんて。そして、いちいちドキドキして、悲鳴まで上げてしまっただなんて。

 私は今、セリオだ。セシリアだとバレてはいけないし……ルーカスに惚れてはいけないのに。

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