悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 
 真っ赤な顔の私と、それをぽかーんと見るルーカス。このまずい状況を変えたのは、

「ルーカス」

低くて渋い男性の声だった。

 滅多に聞くことはないが、私はこの声の主を知っている。そして、この声を聞いた瞬間、背筋をピシッと伸ばしていた。

「お前のおかげで、今年の花祭りも無事終わりそうだ」

 低くて渋い声の男性は、ピシッとスーツを着た四十代後半ほどの男性だった。渋くてかっこいい、イケオジという言葉がぴったりだ。そして彼の背後には、お付きの者が数人並んでいる。そんな男性に向かって、

「それはどうも」

ルーカスはツンとして答える。

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