悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
今さら後悔しても、もう遅い
次の日、トラスター公爵の言葉通り、ブロワ伯爵令嬢のマリアナ様が公爵邸へやって来た。公爵の元へと呼ばれたルーカスがぶつぶつ文句を言っているのを見て、内心ホッとしてしまう自分が情けなかった。
仮に私の気持ちがぐらついているとしても、ルーカスと結婚してはいけないことは頭では分かっている。……それなのに、だ。
マリアナ様は、噂通りの美しい令嬢だった。舞踏会で会った令嬢たちも綺麗だったが、マリアナ様ほどの女性はいなかっただろう。
明るいブロンドの髪に、透き通るような白い肌。華奢で折れてしまいそうな女性っぽい体。どれをとっても、私が勝てるものなんて一つもない。
マリアナ様はルーカスを見て、にこっと微笑んだ。まるで天使や女神みたいなこの笑顔に、女の私でも見惚れてしまう。
ルーカスだって鼻の下を伸ばして……
いない!?
なんと、ルーカスはにこりともせず、刺すような瞳でマリアナ様を見ているのだ。
ルーカスは趣味がおかしいのだろう。この、極上の美人マリアナ様を、全力で拒絶しているなんて!