悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


「ルーカス。ブロワ伯爵令嬢のマリアナだ」

 トラスター公爵に紹介されると、マリアナ様はドレスを軽く持ち上げ、優美な所作で頭を下げる。

「はじめまして、ルーカス様。マリアナと申します。

 お会い出来て嬉しゅうございます」

 こんなマリアナを華麗に無視して、ルーカスはトラスター公爵に怒りをぶちまけた。

「だから、俺はセシリア以外とは結婚しないと言っています!」

 こんなところでセシリアの名を出されるなんて、恥ずかしすぎる。誰がどう見ても、セシリアよりもマリアナ様のほうがいい女性だろう。おまけに、私には罪人の娘という曰くまでついている。そんなこと分かっているが、胸が痛むのはなぜだろう。

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