悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 ブロワ伯爵も来ている手前、ルーカスも断れなかったのだろう。相変わらず嫌そうな顔をしながら、マリアナ様に引っ張られるように外へ出て行く。

 美男のルーカスと、美女のマリアナ様。並ぶとまるで恋の様子を描いた絵画のようだ。お似合いという言葉は、まさしくこの二人のためにあるのだろうか。それくらいお似合いなのだ。

 私なんかが出る幕ではない。そもそも、気が強い者同士ぴったりだと思うのに、胸が引き裂かれたように痛い。


 ……そうか。これが嫉妬というのか。

 ルーカスとマリアナ様がお似合いだと思えば思うほど、私がいてはいけないと思えば思うほど、どす黒い気持ちになり心が悲鳴を上げる。私があそこに行くことが出来れば、幸せになれるだろうと思う。

 認めたくないけど、認めるしかない。私はいつの間にかこんなにも、ルーカスに惹かれていたのだ。

 ルーカスを好きになっていたのだ。



 ルーカスを見送ったあと、そろそろマッシュの散歩の時間であることを思い出した。今日の夕方の散歩は私がしようかな。と思った時、ルーカスとマリアナ様が消えた外から、けたたましい叫び声が聞こえてきた。


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