悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 そしてルーカスは、イラついたようにマリアナ様に告げる。

「もうすぐ陽も落ちる。貴女もそろそろ、伯爵と家へ帰ったらどうか? 」

「そうですわね」

 マリアナは笑顔で告げて、ルーカスの元を去ろうとする。だが、名残惜しそうに振り返って告げた。

「ルーカス様、明日の花祭り、楽しみにしていますわ」

 それに対してルーカスは何も答えない。興味がないのは分かるが、あまりにも露骨すぎて不安になる。



 だが、マリアナ様もマリアナ様だ。ルーカスに背を向けて歩き始めた時には、その顔は怒りに満ちた鬼のようになっていた。そして、私のほうへずかずかと歩いてくる。

 あまりの気迫に、逃げたい気持ちでいっぱいになる。だが、ここでヘマをして、ルーカスに迷惑をかけるわけにはいかない。そして、マリアナ様はすれ違いざまに、小声で告げた。

< 162 / 267 >

この作品をシェア

pagetop