悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
そしてルーカスは、イラついたようにマリアナ様に告げる。
「もうすぐ陽も落ちる。貴女もそろそろ、伯爵と家へ帰ったらどうか? 」
「そうですわね」
マリアナは笑顔で告げて、ルーカスの元を去ろうとする。だが、名残惜しそうに振り返って告げた。
「ルーカス様、明日の花祭り、楽しみにしていますわ」
それに対してルーカスは何も答えない。興味がないのは分かるが、あまりにも露骨すぎて不安になる。
だが、マリアナ様もマリアナ様だ。ルーカスに背を向けて歩き始めた時には、その顔は怒りに満ちた鬼のようになっていた。そして、私のほうへずかずかと歩いてくる。
あまりの気迫に、逃げたい気持ちでいっぱいになる。だが、ここでヘマをして、ルーカスに迷惑をかけるわけにはいかない。そして、マリアナ様はすれ違いざまに、小声で告げた。