悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「あの犬、始末しておいてね」

 ……え!?

「私は近々ここに住むのだから、あんな猛獣がいたら暮らせないわ」

 そして、何事もなかったかのようにすたすたと歩いていってしまった。そんなマリアナ様の後ろ姿を、私は信じられない気持ちで見ている。



 始末ってなに?
 マリアナ様は、本気でマッシュを始末して欲しいわけ!?

 やっぱり私、この人無理だわ。




 胸が嫌な音を立てる。私はルーカスと結婚するつもりなんてないのに、マリアナ様とは結婚して欲しくないと思ってしまう。ここでルーカスがマリアナ様を気に入れば、私は目的を果たせたことになるはずなのに。それなのに、どうしてこんなに胸が痛いのだろう。

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