悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。



「おい、クソチビ」

 ルーカスの声ではっと我に返る。慌てて背筋を伸ばし、平静を装って振り向く。すると、そこにはあからさまに不機嫌な顔でマッシュを抱いているルーカスがいた。

「言っておくが、マッシュは何も悪くない。

 あの女が、マッシュを蹴り飛ばそうとしたから……」



 ルーカス、ちゃんと見ていたんだ。そして、マリアナ様の外面の良さに惑わされていないんだ。ルーカスの言葉を聞いて、ホッとしてしまう自分がいた。



 そんなルーカスに、恐る恐る聞いてしまう。

「あの……マリアナ様は……駄目でしょうか? 」

 するとルーカスは、恨みのこもった瞳で私を睨み、はっきりと告げた。

「駄目に決まっている」

 その言葉を聞いて、ホッとしてしまったのは言うまでもない。

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