悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「そうだ、クソチビ。明日は花祭りだ。
今からセシリアを迎えるための俺の服だとか、部屋の片付けだとかを頼む」
「承知しました。……ですが、ルーカス様……」
私は口ごもりながら、ルーカスに告げる。
「今夜は私も実家へ帰りたいのです。
……じ、実家にいる家族が、体調を崩したようで……」
我ながら、なんて嘘つきな女なのかと思う。
もちろん実家へ帰るのは、家族が体調を崩しているわけではない。明日朝、ルーカスが家へ迎えに来るからだ。そこで私は、セシリアになって、花祭りには行けないと言うつもりだ。これ以上、ルーカスにのめり込んではいけないから。
「……はぁ!? 」
ルーカスはイラついたように私を睨む。さすがの私でも、無茶な話だと思う。ルーカス自ら準備した花祭りの、最後の準備を手伝わないなんて。
だが、セシリアになるためには、セリオでいるわけにはいかない。もちろん、花祭りに行くつもりはないため、セリオとして途中参加する予定ではいるのだが。
明日、私はどうなってしまうのだろう。