悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
彼の弟にバレてしまった
この大切な時に実家に帰りたいと言った私に、案の定ルーカスは怒った。
「おい、クソチビ!てめぇ、正気か!? 」
いくら私でも分かる。使用人は私情を挟まず、主人に尽くさなければならないと。だが、一人二役を演じるには、どこかでセリオは消えなければならない。
こんな私の計画を後押ししてくれたのは、予想外の人物だった。
「兄上、セリオさんはご家族の危機なんです。
万が一ご家族が死んでしまったら、セリオさんは一生それを悔やんで生きることになりませんか? 」
明るい声でそう告げて、ゆっくり私たちのほうへと歩み寄るのは……ルーカスと同じようなブロンドの髪に、碧眼。だが、ルーカスよりも随分優しくて穏やかな顔をした、
「ジョエル様……」
だったのだ。