悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 思わぬジョエル様の登場にホッとし、ジョエル様が私の味方をしてくれることにさらに安堵した。そして、ルーカスだって根っからの悪人ではない。ジョエル様の登場がなかったとしても、いつかは折れてくれるとは思っていた。


「仕方ねぇな」

 チッと舌打ちをして、ぶっきらぼうに告げるルーカス。

 そんなルーカスに、

「ありがとうございます」

と深々と頭を下げていた。

「クソチビ。花祭りのことはいいから、家族を大切にしろよ!」

 ルーカスはそんなことを付け加える。


 そういうの、反則だ。悪人なら、ずっと悪人でいて欲しい。

 こういう小さな優しささえ、私の胸を温かくする。これ以上、ルーカスに惹かれたくないと思っているのに。


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