悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ジョエル様はふっと笑いながら告げる。
「僕、警戒されていますね?
でも、僕なら何かお力になれるかもしれません」
私はまじまじとジョエル様を見つめていた。
何か下心があるのだろうか。
ただ単にルーカスの恋を叶わせたいと思っているのだろうか。それとも、私を陥れようとしているのだろうか。
人のいいジョエル様に限って、それはないと信じたい……
「どうしてそんなことをされているのですか、セシリア嬢」
ジョエル様は優しげだが、逃がさないとでも言うように私に聞く。だから私はとうとう告げていた。
「私はもう平民の身です。
……ルーカスには、もっと相応しい女性がいると思いまして……」
そう言いながらも、胸がズキズキ痛む。
ルーカスと結婚しないことを一番望んでいたのは私なのに、口にすると心が辛い。私はいつの間にか、ルーカスに執着しているようだ。