悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「セシリア。我が家は貧乏だ。
私たちは明日の花祭りに、セシリアに綺麗なドレスを着せて送り出したかった。でも、それすらも出来ない。
……本当に申し訳ない」
頭を垂れるお父様に、
「そんなの、お父様のせいじゃありません」
私は笑顔で告げた。
「それに言ったでしょう? 私は、ルーカスと結婚するつもりはありません」
平静を装うのに、語尾が震えていた。その事実に、お父様が気付かないようにと必死で祈る。
爵位剥奪については、お父様は何も悪くない。だが、この言いようの無い絶望感や怒りを、どこに向ければいいのだろう。