悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 ルーカスのことは好きだ。だが、結婚することは出来ない。そのため、これ以上ルーカスを好きにならないように、私は必死だ。

 このまま花祭りに行ってしまったら、さらにルーカスに惹かれてしまうことは間違いない。だから私は、苦し紛れに花祭りに行けない言い訳を考える。


「ほら……うちは貧乏だから、花祭りに着ていくドレスすらないの」

「そうか、ドレスか」

 ルーカスは少し考えるように私を見る。

 セリオを見る瞳とは違う、甘くて熱っぽい瞳。この瞳で見つめられると、全身の毛穴がきゅーっと閉まるようにさえ思う。

「ドレスくらい、俺が準備する」

「で、でも……!! 」

 焦っている私に、さらに追い討ちをかける人物がいた。彼はルーカスの後ろからひょこっと顔を出し、笑顔で告げたのだ。

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