悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 ちょっと待って!何その、子供みたいな言葉は!?

 キャラが違うんじゃない!?


 思わず顔を上げると、目の前には優しい瞳をしたルーカスの笑顔。美男の心底嬉しそうな笑顔は、心臓に悪い。

 真っ赤な顔で慌てて目を逸らす私の顎を、ぐいっと持ち上げるルーカス。それで、否応無しにルーカスの顔を見ることになってしまう。

 ルーカスは嬉しげで、だが切なげな顔をしていた。甘い目でしっかりと私を見つめ、

「セシリア」

私の名前を呼ぶ。

 その瞳で見つめられるだけで、その声で呼ばれるだけで、胸が熱くなってドキドキが止まらない。

「会えて嬉しい、セシリア」

 ルーカスはそう告げ、そっと唇を重ねる。


 ルーカスの唇が重なった瞬間、体を震えが走った。そして頭がぼーっとして抵抗すら出来ない私の唇を、ルーカスの舌がそっとこじ開ける。

 ルーカスはアイスクリームでも舐めるかのように、そっと私の口内を舐め回す。そしてそのまま手を絡め、ゆっくりと馬車内に押し倒される。

 これはまずいと頭では分かっているが、体がふにゃふにゃで抵抗も出来ない。そして、ルーカスは私を押し倒したまま、さらに唇を重ねる。

 息も出来ない。胸が熱い……

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