悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「愛してる……」
消えそうな声で告げられる、その言葉。
「セシリア……愛してるんだ」
出来ることなら、このままルーカスをぎゅっと抱きしめてしまいたい。離れたくないと言ってしまいたい。
ルーカスに触れれば触れるほど、離れられなくなっていく。底なし沼に落ちるように、ルーカスに堕ちていく……
「本当は、今すぐここで抱きたい。
でも、マルコスが外にいるから駄目だ」
切なげに吐かれる言葉に、私は頷くことしか出来ない。
ルーカスが指南書を読むことすら嫌で、軽蔑していた。だが、こうやって甘く迫られると、いっそのこと抱かれてしまいたいとさえ思う。
今日、こうやってルーカスに会って、また離れられなくなった。また、ルーカスにのめり込んでしまう自分がいた。駄目だとは分かっているのに……私はこうやってルーカスに溺れ続け、どうなってしまうのだろう。