悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
だが、ルーカスはぽかーんと私を見ていた。
「お前……どうしてこいつの名前を……? 」
まずい。私としたことが、ついつい口が滑って。
心臓がドキドキバクバクとうるさい。体が震え、冷や汗が背中を伝う。私がこうも動揺して全身で狂っているのは、紛れもなくルーカスのせいだ。
「お前ってやっぱり……」
息を呑んだ私に、ルーカスは熱っぽい瞳のまま告げたのだ。
「運命の人だったんだな」
その瞬間、ずっこけそうになった。
バレなかったのは幸いだが、ルーカスは天然なのだろうか。それとも、鈍すぎるのだろうか。いずれにせよ、命拾いした。