悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 ホッとしたのも束の間、熱っぽい瞳のルーカスは、マッシュを抱いたままそっと唇を重ねてくる。

 不意打ちすぎて飛び上がる私を、ルーカスは離さない。馬車の中と同様に、隅々までキスされ、唇を離しては「愛してる」と言われ、挙げ句の果てに「抱きたい」と連呼され、頭がおかしくなってしまいそうだ。



 長い長いキスの後、ようやく私を離してくれたルーカスは、切なげに呟いた。

「このまま、二人で部屋に篭ってしまいたい。

 だが、俺はお前のために花祭りの準備をしてきた。
 お楽しみは、祭りの後だ」

「な、なんでそうなるの? 」

 必死に抵抗する。抱かれてはいけないと、頭では思う。だが、体は予想以上に素直なようだ。男性経験なんてないのに、体の芯がとろけてしまいそうに熱く、ルーカスを待っている。……ルーカスを欲している。

「セシリア、愛しているよ」

 恥ずかしげもなく告げられるその言葉が、素直に嬉しいと思ってしまった。


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