悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ルーカスに散々誑かされた私は、ようやく館の小部屋に案内された。
何が始まるのだろうと思ったが、あれよあれよと言う間に体を洗われ、青色のドレスに着替えさせられる。髪は編み込まれ、綺麗な花が挿される。そして、鏡を見ると、見知らぬ人が私を見返していて、正直狼狽えた。
使用人のセリオとして働いていた私。公爵邸ではもちろん制服を着用しており、実家では薄汚れたワンピースを着ていた。それなのに、今の私はどこの令嬢かと見間違うほどだ。お父様はドレスが買えないと言っていたのに、こんなにも上等なドレスを準備していただくなんて……身分差をありありと感じる。
そして、扉を開けたルーカスは、
「セシリア、綺麗だ」
低く甘い声で私に告げる。
「俺の瞳の色のドレスだ。
……俺の女だということを、分からせてやらないとな」