悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 ルーカスはなおも私を品定めするかのように見ている。そして、不意に告げた。

「お前、セリオっていうんだな」

「は、はい!」

「その名前、癪に触る」

「えっ!? 」

「これからはクソチビと呼ぶことにする」


 く……クソチビだなんて、なんて失礼でふざけた名前なのだろう。

 わなわな震える私は、ルーカスに反論したい。だが、ここで喧嘩なんてしたら、ルーカスの思う壺だ。


「素晴らしい名前をありがとうございます、ルーカス様」

 私は笑顔でルーカスに告げる。

「これからは私のことを、クソチビとお呼びください」



 ルーカスはぽかーんと私を見ている。その間抜けな顔を見ると、してやったりだ。心の中で嘲笑ってやる。

 私はルーカスに嫌われようと、クソチビと言われようと、痛くも痒くもない。ただルーカスの素性を暴き、令嬢を仕向けることだけに燃えているのだ。


 ルーカスはふんっと横を向き、

「いくぞ、クソチビ」

吐き出す。そして、大股ですたすたと歩いていってしまった。

 私は小走りで、その後を必死に追った。


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