悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
何やら不吉な予感がします
ルーカスは私の手を取って、花祭りのメイン会場まで連れていってくれた。メイン会場となる花畑は、数日前と同じように満開の花で溢れている。だが、数日前とは違って、多くの人で賑わっていた。
満開の花に見惚れる人に、久しぶりに会う友人と話に花を咲かせる人々。皆が笑顔で、明るい表情をしている。ルーカスが主体となって準備した花祭りを、こんなにも多くの人が楽しんでいるなんてすごい、と感激してしまった。
数日前に来ていることを悟られないように、
「わぁ!すごく綺麗な花畑ね」
私はありったけの笑顔で、驚いたように言う。
「そうだろう。セシリアに見てもらいたくて、俺は準備したんだ」
ルーカスは静かに言う。
以前の予行練習の時と同じようなルーカスの言葉だが、あの時とは全然違う。ルーカスの声や表情はもっと優しげで、もっと嬉しそうだ。こんなルーカスに、ドキドキが止まらない。だから私は、ルーカスに呑まれないように必死に抵抗する。
「私を呼んだのも、下心があるんじゃないの? 」
ルーカスは、私がルーカスを認めさえすれば、祭りを抜け出して朝から晩まで抱き潰すと言っていた。
……冗談じゃない。確かに私はルーカスに惹かれているが、下心ありありなのは困る。結婚だって出来ないのに、関係を持てるはずがない。