悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「セシリア……」

 低く甘い声で名前を呼ばれる。この声で呼ばれるだけで、体をぞぞーっと甘い痺れが走る。

「愛してるよ、セシリア」

 惜しげもなく告げられるその言葉が、心地よいと思ってしまう。そしてルーカスに愛を告げられると、安心してしまう自分がいた。

「今ここで、キスしたい」

「だ、駄目よ。こんなにも人がいっぱいいるの……」



 断ったつもりだった。だが、ルーカスは私の返事を聞く間もなく、唇を重ねる。

 抵抗しようとするも、ルーカスの甘くて優しいキスに、体の力が入らなくなってしまう。立っているのもやっとだ。

 無抵抗の私を堪能するように、ルーカスは唇を貪った。アイスクリームでも舐めるように、そっと優しく口の中を舐める。ルーカスの熱い体温を感じ、私の体もアイスクリームのように溶けてしまいそう。

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