悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
長いキスのあと、そっと唇を離したルーカスは、ぞっとするような甘くて色っぽい声で告げた。
「ごちそうさま」
その妖艶な声は、どこから出てくるのだろう。セリオといたルーカスは、いつも乱暴で荒々しかったから、このギャップにやられてしまう。そして愚かな私は、唇を手で押さえて真っ赤になることしか出来ないのだ。
「本当は、お前を抱きたい。でも、俺が好きなのはセシリアだと、皆に分からせないといけない。
お前は美しくいい女だから、他の男に取られないようにしなければ……」
「誰も、目もくれないわよ」
その前に、ルーカスが笑い者になってしまうのではないか。次期公爵のくせに、平民の、犯罪者の娘に惚れているだなんて。