悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。



 私は浮かない顔をしていたのだろう。そして、悪いことばかり考えて歩いていたのだろう。

 いつの間にか、来賓席に到着していることなんて、全然気づかなかった。そして不意に聞こえたルーカスの、

「ジョエル」

その人物を呼ぶ声に飛び上がった。



 じょ、ジョエル様!? ルーカスは、一番呼んで欲しくない人を呼ぶだなんて。

 ジョエル様は、私がセリオだということを知っている。私はどんな顔をして会えばいいのだろうか……



 思わず俯いてしまった私を、

「俺の妻になる、セシリア・ロレンソだ」

ルーカスはジョエル様に紹介する。

 私はどぎまぎして、ジョエル様を見ることすら出来なかった。ただひたすら頬を染めて俯く。

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